嘘でも良い
顔を洗い、鏡で目元をチェック。
少しだけ赤いけど、涙の雫はない。
あたしは両手で両頬を叩き、玄関へ向かった。
あたしにお客さんって誰だろう?
お姉ちゃんの口ぶりからして、あたしとあまり親しくない人?
玄関の扉は閉まっていたので、あたしは首を傾げながら開けた。
「……!?」
玄関の扉を開けて、1番に目に飛び込んだのは、
赤い、
チューリップだった。
「え……?」
チューリップを間近で見て、固まってしまったけど。
もっと驚いたのは、そのチューリップを持っているお客さんだ。
「つ、月更くん……?」
軽くウェーブのかかった、黒髪。
目元が長い前髪で隠れている。
出会った時とさほど変わらない見た目だけど。
マスクがなかった。