嘘でも良い
家に帰ると、あたしは宿題をお姉ちゃんに渡した。
そしてあたしは、宿題よりも面倒なことをする。
お姉ちゃんは誰とも付き合うつもりがないらしい。
てかその前に、お姉ちゃんは男嫌いだ。
本当は話すだけでも嫌気がさすらしいのだが、男子は気が付かないでお姉ちゃんに寄り、外面の良いお姉ちゃんは愛想良く接する。
男子たちが楽しみにしているラブレターの返信も、全て妹のあたしがやっているとも知らずにね。
本当、単純で呑気だと思う。
あたしはラブレターを1通ずつ開けて行く。
そして甘い言葉の並べられた文章を読み、ピンク色のレターセットを使って返信を書く。
お姉ちゃんとあたしは、字が似ているから、男子はお姉ちゃんからの返信からだって喜ぶ。
お姉ちゃんは誰1人も返信しないのにね。
健気に返信しているのは、あたしなのにね。
あたしがお姉ちゃんのラブレターの返信をし出すようになったのは、中学に入ってすぐぐらいのこと。
小学校時代からモテていたお姉ちゃんは、勿論中学でもラブレターをもらった。
最初は真面目に返信していたお姉ちゃんだけど、いつしか面倒になったらしく、字の似ているあたしが返信をするよう押し付けてきたのだ。
勿論あたしは断ったんだけど、お姉ちゃんに勝てるはずもなく、それ以来返信はあたしがしている。
代わりにお姉ちゃんは、あたしの宿題をしてくれる。
ただ姉であっても他人のラブレターの代筆は大変で、宿題の方がよっぽど楽だ。
文句は大体皆同じだから、文章に悩むことはなくなって来たけど。
やはり男子に「お姉ちゃんからの返信」と渡すのには、まだ罪悪感がある。
だって男子は、憧れている夏美様から返信をもらっているのだから。
渡した時に男子が見せる嬉しそうな笑顔に、あたしの良心はその度に痛むのだ。