嘘でも良い







家に帰ると、あたしは宿題をお姉ちゃんに渡した。

そしてあたしは、宿題よりも面倒なことをする。




お姉ちゃんは誰とも付き合うつもりがないらしい。

てかその前に、お姉ちゃんは男嫌いだ。

本当は話すだけでも嫌気がさすらしいのだが、男子は気が付かないでお姉ちゃんに寄り、外面の良いお姉ちゃんは愛想良く接する。

男子たちが楽しみにしているラブレターの返信も、全て妹のあたしがやっているとも知らずにね。

本当、単純で呑気だと思う。




あたしはラブレターを1通ずつ開けて行く。

そして甘い言葉の並べられた文章を読み、ピンク色のレターセットを使って返信を書く。

お姉ちゃんとあたしは、字が似ているから、男子はお姉ちゃんからの返信からだって喜ぶ。

お姉ちゃんは誰1人も返信しないのにね。

健気に返信しているのは、あたしなのにね。




あたしがお姉ちゃんのラブレターの返信をし出すようになったのは、中学に入ってすぐぐらいのこと。

小学校時代からモテていたお姉ちゃんは、勿論中学でもラブレターをもらった。

最初は真面目に返信していたお姉ちゃんだけど、いつしか面倒になったらしく、字の似ているあたしが返信をするよう押し付けてきたのだ。

勿論あたしは断ったんだけど、お姉ちゃんに勝てるはずもなく、それ以来返信はあたしがしている。

代わりにお姉ちゃんは、あたしの宿題をしてくれる。

ただ姉であっても他人のラブレターの代筆は大変で、宿題の方がよっぽど楽だ。




文句は大体皆同じだから、文章に悩むことはなくなって来たけど。

やはり男子に「お姉ちゃんからの返信」と渡すのには、まだ罪悪感がある。

だって男子は、憧れている夏美様から返信をもらっているのだから。

渡した時に男子が見せる嬉しそうな笑顔に、あたしの良心はその度に痛むのだ。






< 7 / 123 >

この作品をシェア

pagetop