嘘でも良い
月更くんは小さく頷くと、再びケイタイを開いて、何かをうち込み始めた。
数秒後、マナーモードが鳴った。
<越田さんからのメールに、
お姉さんの代わりをしていたと
書いてありましたが。
実は、
僕も同じなんです。
ムーンとして越田さんと
メールや手紙のやり取りを
していたのは僕ですが、
僕は本当のムーンの
身代わりなんです。
越田さんと、
同じだったんです>
月更くんが…あたしと同じ?
身代わりだったの?
<僕も昔から、
兄の手紙の代筆をしていました。
そんな兄がある時、
別の高校に通う夏美さんを
好きになったんです。
同じ高校に通うことになった
僕に、兄はムーンになるよう
頼み込んできたんです。
僕は兄に言われた通りに
手紙を書いて、
夏美さんの下駄箱に
いれようとしました。
ですが、中には溢れんばかりに
手紙が入っていたので、
双子の妹さんである
越田さんの下駄箱に、
手紙を入れたんです>
お兄さんの手紙の代筆?
本当に、あたしと同じ境遇だったんだ。