嘘でも良い
<僕は兄に言われた通り、
夏美さんに気にいられるよう、
手紙とメールをうちました。
文章を考えるのは苦手なので、
あんまりうつことは出来ませんでしたけど。
ですから、驚きました。
まさか越田さんが、
夏美さんの代わりをしていたなんて>
「あたしも驚いたよ…。
まさかムーンくんも、あたしと同じ身代わりだったなんて」
<強い上を持つと、大変ですよね>
「うん、大変!」
あたしは初めて言った。
今まで外面の良い姉のお蔭で、あたしは素直に言えなかった。
だけど同じ境遇の月更くんになら、言えた。
「そういえば、そのお兄さんはどうしたの?」
<今、夏美さんと付き合っています。
どうやら待てずに自分から告白したようで>
今、夏美さんと付き合ってます!?
「月更くんのお兄さんって、月平皇紀くん!?」
月更くんは長い前髪の奥の二重の瞳を大きく見開き、頷いた。
<知っていたんですね>
「まあね…。
一応あたしとお姉ちゃん、双子だもん」
<僕も、双子なんですよ>
あたしはその文面を見て、思わず吹き出した。
「あたしたち、どこまでも一緒だね」
<そうですね>
ふっと月更くんも笑った。
信じられない。
ムーンくんと、話せる日が来るなんて。
ずっとずっと、叶わないと思っていたから。
あたし、今が1番幸せ。
大好きな人と、こうして笑いあえるんだから。