嘘でも良い
第5章
代筆 彷徨side
僕が父親を亡くしたのは、高校1年の最初の方だった。
僕の両親は幼い頃離婚し、双子の兄である皇紀は、母親の元へ行き、僕は父親に引き取られた。
父親は僕を育てるため、時間を問わず働いた。
だけど父さんは仕事でミスを連発し、上の人に怒られる日々が続いた。
そして遂に、父さんは僕の目の前で睡眠薬を大量に飲み、自殺した。
それを目も逸らさず真っ直ぐに見ていた僕は、目の前で命が消えていく瞬間を見て、思わず気を失った。
親戚や祖父母はいなかったから、病室には母さんと兄貴が来た。
そこで僕は初めて、声を失ったことに気が付いた。
医者曰く、目の前で自殺する瞬間を見たからだと言われた。
まさか高校生にもなってショックで声を失うなんて。
元々兄貴と違って人見知りの激しい僕は、声を無くしてから一気に友人を失くした。
別に元々そんなに親しい関係ではなかった。
だけど、僕はそれ以来学校に通わず、家に引きこもった。
母親とはもう“母親”ではなかったし、兄貴も“兄貴”ではなかったから、母親は僕を引き取るつもりなんてなかった。
母親は僕より、優秀な兄貴が好きだったから。
母親だけじゃない、父親もだ。
きっと父さんも、僕じゃなく兄貴を引き取っていたのなら、自殺なんてしなかっただろうに。
だけど兄貴だけは、変わらず兄貴でいてくれた。
学校帰りに僕の家に通い、色々話しかけてくれた。
まぁもっとも、僕は頷くとか首を振るとかしか出来なかったんだけどね。