嘘でも良い
<いきなりすぎない?
どうして?>
「実はよ、俺、三金高校に通う子が好きになったんだ>
驚いた。
女なんて皆同じ、と考えているような遊び人の兄貴だ。
そんな兄貴が、女子を好きになるだなんて。
<どこで出会ったの?>
「三金高校の前の校門前に立っているのを見つけたんだ。
名前も聞いたんだ」
<どうやって知れたの?
普通他校の女子の名前なんて知れないでしょ。
もしかして兄貴、またナンパ?>
「ひ、人聞き悪いこと言うなよ!」
<事実だろう?>
「…やっぱりお前には隠せねーわ。
まぁともかく、ナンパじゃねーよ。
その子モテるみたいでさ、多くの男子に囲まれていたんだよ。
その時に名前を聞いたんだ。
越田夏美さんだ」
<で?
何で僕が三金高校に通うことになるの>
「お前が三金高校に通って、その夏美と仲良くなる。
それでお前の兄貴として、俺が紹介されるんだ」
<僕が?
無理に決まっているじゃないか>
僕が兄貴と「本当に双子?」と疑いたくなるような性格・容姿など全てに置いて正反対なんだから。
僕がそんな男子に囲まれた女子に話しかけられるわけないだろ。
そもそも僕、声出ないし。
「大丈夫だ。
俺もお前にそんな無謀な真似はさせねーよ」
兄貴は笑って、僕の肩に手を置いた。