嘘でも良い
「俺の100人の女の子に聞いたんだがな」
何でそんなに知り合いがいるんだか。
本当コミュニケーション能力、全部兄貴に取られたよね。
「越田夏美には双子の妹、越田夏月がいるんだ。
越田夏月はお前みたいに、地味で目立たない。
話しかけるのには、うってつけだろう」
姉と正反対で、目立たない…か。
僕と同じじゃないか。
…同じにしたら、その子に悪いか。
「母さんには俺から説明しておく。
だから彷徨、お前は俺のために三金高校に行け」
無茶苦茶だなぁ。
そう思ったけど、僕が兄貴に逆らえるわけなくて。
渋々だけど、頷いた。
そして、三金高校への転校が決まった。
新しい制服を着て、高校へ向かう。
前髪が長いからうっとおしいけど、この前髪のお蔭で誰にも話しかけられずに済むし。
これでマスクをつければ、完全に誰も話しかけなくなる。
本当は眼鏡もかけようかと思ったけど、兄貴に「ダサいからやめろ」と止められた。
別に僕、ダサくて良いんだけど。
てかむしろ、そっちのほうが話しかけられなくて良いし、好都合。
そんなことを思いながら、僕は三金高校に到着した。