嘘でも良い







でもこれじゃ、兄貴の手紙が入らない。

どうしよう?



そうだ。

確か兄貴が言っていたな。

越田夏美には双子の妹がいるって。

越田夏月だっけ?

その子の下駄箱探そうっと。

…その子の下駄箱の中に溢れかえっていないことを信じて。




姉の下駄箱から離れた位置に、妹の下駄箱を見つけた。

きっと、クラスが違うんだろうな。

恐る恐る開けてみると、中からは1枚も出て来なかった。

…本当に、僕と似ている。

お姉さんと扱いが、全く違うな。




僕は越田夏月の下駄箱に、手紙を入れた。

それから職員室へ向かう。

結構思ったより時間がかかったから、早めに家を出て正解だったな。










「名前、なんて言うんだ?」



職員室で担任だと名乗る先生に聞かれる。

僕はそのまま黙り込んだ。

てか、黙り込むことしか出来ない。




「黙っていちゃわからないだろう。
自分の名前ぐらい、言えるだろう。
それともなんだ、恥ずかしがり屋なのか?」



恥ずかしいほどの勘違いだった。








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