嘘でも良い
「夏月ー宿題終わったけど、返信は終わった?」
「まだ途中」
勝手にノックもなしにあたしの部屋へ入るお姉ちゃん。
本当、常識のない姉だ。
そして躊躇いもなく、あたしのベッドに横になるお姉ちゃん。
本当このグダグダ感を、男子どもに見せてやりたい。
これがアイツらの憧れる夏美様の正体だってな。
「あー、今日も疲れたー」
「愛想良くしているからよ。
もう少し無愛想にすれば良いじゃない」
「馬鹿ね。
私ほど顔が良いと、愛想良くしないと駄目なの。
そりゃあ夏月みたいにブスなら、無愛想でも良いと思うけど」
ナルシストで、軽々とあたしを馬鹿にして。
別にいつものことだから、スルーさせてもらう。
「夏月も私の妹なんだから、もう少し可愛くしなさい」
「嫌だ。
あたしはお姉ちゃんと違うの」
本当はあたし、顔がお姉ちゃんそっくりなんだ。
外見でお姉ちゃんと違うのは、近眼だから眼鏡をかけている所だけ。
お姉ちゃん、本当は黒髪だからね。
だけど、あたしがお願いして茶髪になっているの。
中学の頃、あたしもお姉ちゃんも黒髪だった。
あたしは眼鏡だったけど普段はコンタクトをしていたから、本当にお姉ちゃんとそっくりだった。
だから、男子があたしとお姉ちゃんを間違えて告白することが多くて。
あたしがお姉ちゃんじゃないと知ると、男子は本当に哀しそうな顔をして、あたしに謝ることが多発したんだ。
それ以来、あたしはお姉ちゃんと違うことを表すため、眼鏡をかけて、お姉ちゃんに茶髪にするよう頼んだんだ。