嘘でも良い
僕は何も言わず―――というか何も言えないので、黙って首を振った。
教師はますます首を傾げるばかりだ。
「あ、先生。
彼声出ないって連絡来ているじゃないですか」
隣に座っていた別の教師が、フォローした。
担任は「あぁ、そうでしたね」と他人事のように言い、僕に本当か聞いてきた。
僕は頷いた。
「ならそう言え」
担任は舌打ちをすると、「行くぞ」と立ちあがった。
僕は俯きがちに教室へ行った。
好きで出ないんじゃないんだ。
僕だって何度も出そうとしたよ。
無理だったから、こうしているんじゃないか。
何で僕がそう言われないといけないんだ。
「転入生を紹介する」
担任に名前を呼ばれて入ると、クラスの人が口々に話し始める。
話している内容は、模範解答のように同じ。
「ダサい」とか「キモい」とか。
別に言われ慣れているし、気にしない。
…慣れって、本当に怖いよね。
兄貴だったのならば、もっと違う対応だったんだろうけど。
…何で僕、兄貴と違うんだろ。