嘘でも良い
「月更彷徨だ。
月更は声が出ないんだ。
優しくしてやれよ」
いや、別に良いです。
そう言えれば良いんだけど。
関わらないでほしいな。
そっちの方が楽だから。
面倒な人間関係なんて、築くだけ無駄。
そもそも、僕に話しかける奴なんていないだろうし。
僕の予想通り、誰も話しかけては来なかった。
僕にとっては好都合だから、良いんだけど。
お気に入りの短編小説を読み直しながら、僕は溜息をついた。
「月更!」
作者が作りだす架空の世界に没頭していると。
どちらかというと派手な女子が集まってきた。
…何?誰?何の用?
わざわざ地味とか言いに来たの?
迷惑なだけなんだけど。
「月更ってもしかして、月平皇紀の弟?」
月平皇紀…兄貴。
何で兄貴、名前知られているわけ?
他校だよ、他校!