嘘でも良い
僕は俯きながら頷いた。
「やっぱりー!
弟がこの高校に転入するって聞いたからさ!
月更って下の名前に、皇帝の皇の字はいっているでしょ?
ねぇ月更、皇紀くんのメアド教えてくれない?」
僕は本にしおりを挟み、ケイタイを取り出した。
教えるわけじゃなく、一応兄貴に確認。
教えても良いって言うだろうけど。
<教えても良いぞ!
むしろ、ウェルカムだ!>
その文面を見せて、兄貴のメアドを教える。
派手な女子たちは喜んで行ってしまった。
僕は溜息をついて、ケイタイを仕舞う。
そういえば、越田さん読んだのかな。
どっちが読んだのだろうか?
越田夏月には、悪いことしたよなぁ。
折角自分の下駄箱に手紙がはいっていたというのに。
まさかお姉さん宛ての手紙だって知ったら。
僕と同じで、「いつものことか」って割り切れていれば良いけど。
ショックを受けて、自殺とかしたら…。
人間は簡単に自殺するってこと、僕は知っているからね。
『じゃあな』
…僕は再び、本を開いた。