嘘でも良い
望みのない恋 彷徨side
次の日も朝早く、誰よりも登校して、越田夏月の下駄箱に手紙を入れた。
本当にもう、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。
手紙を中にいれ、僕は教室へ向かった。
教室に着き、いつものように小説を読む。
しかし内容は全く頭にはいってこない。
まぁ内容は全て覚えているほど、何度も読んでいたからね。
今考えているのは、メールアドレスについてだ。
名前は教えたけど、返事が出来ないから。
僕はメアドでやり取りすることを思いついたのだ。
だけど本当に兄貴のメアドは教えない。
兄貴のメアドは昨日みたく聞いてくる女子が多く、もし越田夏美が知ってしまったら、「正体をバラさないでくれ」と頼んできた兄貴の頼みがパアになる。
だから兄貴のメアドは教えない。
でも、僕のメアドも教えない。
送り主が僕だとわかったら、面倒なことになるからだ。
この間僕は、帰り際に越田夏美を見た。
確かに男子に囲まれていて、ちやほやされていた。
普通の男子だったら彼女になるのを諦めたくなるような、高嶺の花のような存在だ。
僕は興味ないけど。
あんな女王みたいな女子に手紙を送っていたのが、こんなぺんぺん草以下の僕だとわかれば、兄貴にも迷惑がかかる。
それ以外にも面倒なことはあるので、僕のメアドは教えられない。
だからといって新しくケイタイを買う余裕なんてないし。
学費を払う母親にも、「必要最低限にしてほしい」と言われている。
本当離婚しても、僕への扱いは変わらないんだから。
しょうがない。
僕のケイタイのメアドを変えるか。
僕のメアドなんて聞いてくる奇特な女子はいないし。
僕はケイタイを開き、メアドを変えようとした。