嘘でも良い
☆☆☆
僕が越田夏美とメールのやり取りをするようになってから、1週間が経っていた。
普段こんなに人と話さない僕は、毎回緊張していた。
話さなくても、すれ違うだけで驚いてUターンすることもあった。
そして誰も知らない所で、肩にはいった余計な力を抜くのだ。
なんか疲れるなぁ。
でも、越田夏美は悪い人じゃない。
僕が兄貴としてメールしているからなのか?
兄貴は人見知りしないから。
…本当羨ましい。
越田夏美は毎回手紙を送ると、似たような時間に返信してきた。
シンプルで、目立つ越田夏美のようなメールじゃないみたい。
ただ…なんとなく、楽しんでいる感じがする。
メールしている姿を見たことないけど、笑みを浮かべながらメールをうっているのかな?
なんだか、そんな感じがするんだ。
「彷徨。
お前最近嬉しそうだな」
兄貴が僕の顔を見ながら、ニヤニヤした。
…我が兄だけど、気味悪い。
「そ~んなに夏美さんと話すのが楽しいか?」
僕は思い切り首を振った。
大変で大変で…寿命が縮まりそうだ。
「そうだ彷徨。
メールするのが楽しいのは良いけど、俺の好きな人勝手に奪うなよ」
そんな命を捨てるような真似はしない。
しかもあんな派手な子、好きじゃないし。
僕は何度も頷いた。