嘘でも良い
本当はあたしも、お姉ちゃんみたいに可愛い女子高校生の格好をしてみたいけど。
男子を哀しませちゃいけないから、あたしはあえて地味な格好をする。
あたしが地味な格好をすれば、誰も傷つかなくて済むから。
「そうだ。
夏月、今度私宛てのラブレターに返事して良いよ」
「いつもしているんですけど」
「断りじゃなくて、オッケーの返事」
「は!?」
あたしは書く手を止め、お姉ちゃんを振り返った。
「私宛の手紙に、オッケーしなさい。
そうしたら、夏月は私の格好をして会えば良いのよ。
学校で話しかけないでくださいって言えば、夏月が私の格好をしていることもバレないでしょ?」
そ、そんな軽々と言うな!
「そんなの出来るわけないでしょ!
その人はお姉ちゃん宛てに手紙を書いたんだよ。
何であたしがオッケーしちゃうのよ」
「夏月もそろそろ彼氏の1人や2人作りなさい」
「嫌だよ。
男子なんて全員、お姉ちゃん目当てなんだから」
どんな人だってそう。
イケメンからブサイクまで、全員お姉ちゃん目当てだった。
「話があります」って言われて校舎裏に行けば、「お姉ちゃんは彼氏いるか」とか「メアドを聞きたい」とかそんなのばっかり。
あたし宛てに来たこと何て、1度もないんだからね!
「あたしのこと考えるんだったら、自分の愛想の良さをどうにかすれば?」
「だから駄目だって言っているでしょ?
私ほど顔が良いと―――……」
「もう良い」
あたしは再び、ラブレターの代筆のため、手を動かし始めた。