嘘でも良い
僕はフイと教室へ向かった。
男子女子問わず騒いでいたけど、僕には関係ないし。
そういえば越田夏月は、何を持っていたんだろう?
男子にラブレターか!?と茶化されていたけど。
…もしかして、あの月の封筒?
表に書かれた名前を見ない限り、越田夏月宛ての手紙に見えるよな。
何で越田夏月は、その場で姉である越田夏美に渡さなかったのだろうか?
双子なんだ、一緒に学校に来ているはず。
現にあの場に、越田夏美はいた。
…何で渡さなかったんだ?
本当に手紙を見て、僕にメールを送るのは。
越田夏美、なのだろうか?
僕の中で、そんな考えが生まれた。
…なわけないか。
僕の勝手な思い込みだ。
ただ手紙を持っているだけで、疑うだなんて。
僕ってこんなに、疑り深かったかなぁ。
きっと警戒心が強くなっているんだ。
父さんを目の前で失った、あの日から。
僕は誰に対しても、恐怖心を持っているんだ。
いつか、
消えちゃうんじゃないかって。