嘘でも良い








授業中、僕は越田夏月を思い浮かべていた。

姉とは違い、地味だけど必死そうな彼女。

特に越田夏美には興味なかったけど、越田夏月には興味を持った。

何でか、自分でもよくわからないけど。






放課後。

僕は家で、ケイタイをいじっていた。

兄貴は毎日僕の家によって帰るけど、今はいない。

兄貴の学校は進学校だから、まだ授業が終わっていないのだ。

父さんが死ななければ、僕の声が出ていれば、僕も行っていた高校。

…何で兄貴ばっかり、人生良いことづくしなんだろうか?





嫉妬なんてそんな、見苦しいものはしない。

だけど、双子だからそう思ってしまうんだ。

僕も長い髪を切って兄貴と同じ格好をすれば、兄貴とそっくりだ。

だけどそれ以外は似ていなくて、そのせいで周りから色々言われるのに嫌気が差して、僕はこの髪にしている。

黙っていればわからない、僕と兄貴。

なのに、周りの対応は全く違う。

…何で僕、兄貴に生まれて来なかったんだろう。




なんとなく、だけど。

根拠なんてないけど。

あの越田夏月は、そんな感じがする。

目立つ双子の姉を持つ、妹。

境遇は凄く、僕と似ている。



だけど、彼女は僕と違う。

自然にお礼も言えるし、なんだか真っ直ぐそうだ。

僕とは、正反対だ。







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