叶う。 Chapter1
季節はもう、秋から冬に変わる。
まだ7時少し前だというのに、辺りは既に真っ暗だった。
私はマフラーをしっかりと首に巻きつけ、急ぎ足で自宅へと向かう。
ピアノ教室から自宅までは、徒歩15分程度。
歩きなれたその道を、少し足早に歩く。
私が住むこの街は、夜でも賑やかで人通りは多い。
治安が良いか、と聞かれれば良くないというのが真実だけれど、ここにやってきてから危ない目に合った事は1度きり。
それには理由があったから、正確にはそれ以外で危ない目に合った事はない。
人通りが多いという事は、それだけ人目があるという事。
だから、私みたいな小娘が一人歩きをしていても比較的安心だ。