叶う。 Chapter1



世界がモノクロになれば、余計な物を見なくても済んだ。

耳を塞げば、余計な音を聞かずに済んだ。


どうして私はこう、運がないんだろうか。
さっきまではとても楽しい一日だったのに。
なんでよりによって今日という日に、こんな人に絡まれるんだろうか。


神様は意地悪だ。

私はただ、平穏な一日を過ごしたいだけなのに。



“あんたが幸せになることなんて許さない”


そう言った、お母さんの声が聞こえた気がした。
そうだよね、私には平穏な一日を過ごす権利なんかない。

それでも、もうママに心配をかけることだけはしたくない。


今日は金曜日だから、ママはもちろん仕事だし、シオンとレオンも出掛けているはず。


だからさっさと終わらせて、早く帰りたい。
黙っておけば済む話。

もう目の前に迫ったモノクロに映るホテル街を眺めながら、私は全てを諦めた。




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