叶う。 Chapter1
「・・・・・アンナ?」
男に肩を抱かれながら歩いていた私は、聞き覚えのある声に足を止めた。
「・・・・おい。」
私は声のする方向にゆっくりと視線を向けた。
立ち止まった私を不思議に思ったのか、私の肩を抱く知らない男もつられてそっちを見た。
モノクロに映る私の視界に映ったのは、深い蒼い色。
目と目が合った瞬間、私の瞳に色が戻っていく。
「シオ・・・・ン。」
私がそう口にした瞬間、私を拘束していた腕が離れた。
「あ、紫音(シオン)さん、え?知り合いですか?」
男は何かを察したように早口でそう言った。
シオンは私から視線を外さなかった。
私もシオンから視線を外せなかった。
何だか複雑な気持ちが混ざり合って、どうしたらいいのか分からない。
「・・・誰?」
無言で見詰め合う私達は、その透き通るような声で現実に戻った。
その声の主は、シオンの腕に自分の腕を絡ませていた。
少し化粧が濃い気がするけれど、その人はすごく綺麗な人だった。
ママみたいに背が高くて、グラマーなその人は多分世の男達にとって高嶺の花なんだろう事が外見だけで分かる。
その人は不思議そうにシオンと私を交互に見比べる。