叶う。 Chapter1
2,3歩進んで私はハっとした。
「ちょっと待って。」
私の言葉に、シオンはうざったそうに眉間にしわを寄せる。
私は完全に大人しくなった、さっきの男のところまで戻ると両手を差し出した。
「返して下さい。」
「あ、はい。」
男は完全に怯えている様子だった。
さっきまではあんなに気味の悪い笑みを浮かべていたのに、その変わりようにちょっとびっくりした。
シオンの事を知っている様子だったけれど、もうそんな事はどうでも良かった。
男から分厚い本を受け取ると、それは相変わらずずっしりと重くて、私は一瞬ふらついたけれど、いつの間にか背後に現れていたシオンに支えられた。
モノクロになると、私は良く眩暈を起こす。
シオンを見上げると、シオンは無言で目の前の男を睨みつけてた。
その鋭い眼差しに一瞬寒気を感じたけれど、私は何も出来ないし言わない。
気まずい空気が辺りを満たしていた。
だけれどシオンは、何も言わずに私の手から本を取り上げると、私の腰の辺りを掴んでそのまま歩きだした。