叶う。 Chapter1
私にぴったり寄り添うように歩いているシオン。
そのペースは何故かいつもよりゆっくりで、軽く眩暈がする私にはとても有難かった。
「・・・・ごめんね。」
私は俯いたまま、素直に謝った。
余計な面倒を掛けてしまったし、あの綺麗な女の人を怒らせてしまったんじゃないかってそう思ったら、申し訳なさでいっぱいだった。
毎週末、シオンもレオンもほとんど家に居る事がない。
レオンは日頃の行動や、女性関係の話をよく耳にしていたので、なんとなく想像はできていたけれど、シオンについては謎だった。
何をしているのか、何処にいるのかすら私は興味がなかったし、知らなかったし、予想すらしなかった。
だけれどシオンは、デートしたりしていたのだと、今日初めて知ってしまった。
それもそのはずだ、シオンは物凄く女性にもてるだろう。
整った綺麗な顔立ち、高い身長、程よい筋肉質な引き締まった身体、寡黙でミステリアスな雰囲気、どれをとっても、もてない要素なんて一つもない。
だから、彼女の一人や二人居ない方が逆におかしい。
私にとっては、ただの兄という存在だけれど、普通に見たらきっとほとんどの人にとっては恋愛対象に見えても不思議はない。
シオンは私の声が聞こえないかのように、返事すらしてくれなかったけれど、いつもよりゆっくりと自宅に向かって歩き続ける。
結局シオンはマンションに着くまで、一言も口を聞いてくれなかった。