叶う。 Chapter1
マンションに着くと、今日の守衛さんは岸谷さんではなかった。
週に何度か、違う人になるからきっと交代制なんだろうと思う。
岸谷さんよりもかなり年齢は若いその人は、シオンと私の姿を捉えただけですぐにマンションの入り口を開ける。
住人を全て記憶しているのかは分からないけれど、少なくともシオンやレオンの事は見た目で直ぐ分かるんだろう。
一応このマンションは、入り口で身分証を出さないと入り口を開けてもらうことすら出来ない。
顔見知りだったら、問題なく開けてくれるんだけれど、やっぱりそれなりにセキュリティは厳しいらしい。
マンションに入った瞬間、シオンは私から手を離すと、真っ直ぐにエレベーターに向かう。
私は俯いたままその後に続いた。
なんとなく、シオンの顔を見ることが出来ない。
シオンはそんな私を完全に無視してカードキーを取り出して、エレベーターを呼んだ。
エレベーターは直ぐにやってきて、私は相変わらず俯いたままシオンに続いて乗り込んだ。
なんとなくだけれど、シオンが怒っている気がした。