叶う。 Chapter1



もっと沢山怒られたりするかと思ったけれど、なんだかシオンの行動に拍子抜けした。
そして微かな違和感が頭を過ぎる。

もう何度も身体を重ねているから、シオンの体温や匂いには慣れている。
その腕の太さや、胸板の厚さすらちゃんと記憶している私はその違和感がなんなのか分からなかった。

だけれど、深く考えるのは辞めた。

色々あったけれど、とにかくシオンのおかげで無事だったし、何よりも知らない男に触れられた箇所が気持ち悪いので、早くお風呂に入りたい。

落としたマフラーを拾い上げると、それを今度こそきちんと机に置いて、私は丁寧に編みこんだ髪を梳こうと鏡台に向かった。


鏡を見ながら、髪に差し込んであるピンを一つずつ外す。
慣れた手つきで髪を梳き終わると、今度は丁寧にブラシをかけていく。

そうしないと、私の髪は柔らかくてすぐに絡まってしまう。

絡まると言えば、シオンと身体を重ねた後の髪はいつも絡まって梳かすのが大変な事をふと思い出した。


そして私は、ハッとした。
違和感の正体に気がついたからだ。




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