叶う。 Chapter1
/涙の理由(わけ)
部屋に戻って、鞄から楽譜を取り出すと、今日買ってきた本も一緒に持って防音室に向かう。
防音室は6畳程の広さだけれど、大きなグランドピアノが置いてあるので物凄く狭く感じる。
それに、兄達が使っているヴァイオリンもこの部屋に置かれていた。
最近はすっかりそれを使う兄達の姿を見かけないけれど、たまに時間が合えば一緒に演奏することもある。
楽器はデリケートなので、空調や湿度が一定の数値を保っているこの部屋できちんと管理されている。
防音室は扉を閉めると、完全に密封された空間になる。
ほんの少し息苦しさを感じるけれど、広すぎるこの家の中では唯一狭くて安心出来る空間であることも確かだった。
私はピアノの椅子に座り、買ってきた本を読み始めた。
本の内容はとても面白くて、私は夢中になってその本を読み耽った。