叶う。 Chapter1
それも理由は簡単なことで、私を“アンナ”と名付けた人の顔を私は知らないからだ。
顔を知らない、というよりも存在自体知らない。
それは私の父親で、どこにるのか、生きているのかすら私は知らない。
それを知っていた唯一の母親も、もうこの世には居ないのだから、調べようもない。
そもそも母が生きていたとしても、私にとって父親なんてきっとどうでもいい存在だろうとも思う。
ただただ、興味がないだけなのかもしれない。
物心ついた時から、私には母親しかいなかった。
たまに知らない男が家に来ることはあったけれど、私の様な外見の人を見かけることもなかった。
だから、きっと私は父を見たことがないのだと思う。