叶う。 Chapter1




「やぁ、アンナちゃんお帰り。」


「こんばんは、岸谷さん。」


「最近、帰りが遅いね。ピアノかい?」


「はい、発表会が近いので。」


「大変だね、でもアンナちゃんの演奏を聴いてみたいもんだね。とても上手だって噂だから。」


「・・・ありがとうございます。」


岸谷さんはそう言って、手元の機械を操作した。
マンションの入り口がゆっくりと開く。

岸谷さんはこのマンションの守衛さん。
多分、年齢でいったら私のおじいちゃんくらいの年齢なんだと思う。

私がこのマンションにやってきてから、家族以外で唯一会話をするのは、この岸谷さんくらいだ。



< 13 / 452 >

この作品をシェア

pagetop