叶う。 Chapter1
レオンの突拍子もないこういう行動には、もうすっかり慣れている。
私は何事もなかったかのように、さっさと冷蔵庫から適当に食材を取り出し、朝食を作り始めた。
フライパンに乗せたベーコンが、食欲はそそる音を出し始めたところで、リビングの扉が開く。
「おはようアンナ。」
振り返ると、まだ少し眠そうなママが私の所に向かって来るのが見えた。
「おはようママ。」
ママは私の隣で電気ケトルに水を入れると、そのスイッチを押してからダイニングテーブルに向かった。
そしてテーブルに置かれたタバコケースからタバコを一本取り出すと、それに火をつける。
そして咥えタバコのまま、コーヒーを入れる準備を始めた。
タバコを吸わない人からしてみたら、それは凄くだらしがなく見えるのかもしれないけれど、不思議なものでママがそうしている姿は私にとってはカッコいいし、似合うと思う。
だけど自分では吸おうとは思わないし、何よりこんな私がそんなことをしてもカッコ悪いだけだと思う。
「アンナもコーヒー飲む?」
ママの問いかけに返事をしようとした瞬間、なぜか違う声がそれに返事をした。