叶う。 Chapter1
高級マンション、と呼ばれるこの建物の住人は、皆どこかそっけなくて、他人に無関心。
私も他人には無関心だけれど、挨拶されればきちんと返すし、岸谷さんみたいに話しかけられれば愛想よく受け答え出来るくらいの常識はある。
無駄に広いエントランスを通ると、エレベーターの前で立ち止まる。
鞄からカードキーを取り出して、エレベーターに備え付けられた機械にスライドさせ、暗証番号を打ち込む。
ピッと短い機械音が聞こえて、すぐにエレベーターが動き出した。
この住まいに不満があるとするなら、この無駄に多いセキュリティだけだ。
4・・・・3・・・2・・1。
エレベーターはすぐにやってきた。
私はそれに乗り込むと、迷うことなく15階のボタンに触れた。