叶う。 Chapter1
突然ハッと目を覚ました。
がばっとベッドから起き上がると、周囲を見渡した。
だけれど視界に映るのは、いつもと変わらない部屋だけだった。
夢?
唇にそっと指先で触れてみたけれど、その感触はいつもと変わらなかった。
窓から差し込む光はもう明るくて、私は久しぶりにぐっすり朝まで眠ったようだった。
大きく伸びをすると、何だかすっごく気持ちが良い。
薬を飲む事は好きではないけれど、これくらい熟睡出来るなら昨日先生に言われた通り、薬に頼るのも悪いことじゃないのかもしれない。
それにしても、なんだか不思議な夢を見た気がする。
誰かにキスされたような、不思議な夢。
それは不快じゃなくって、何だか少し恥ずかしい気分になった。
そんな夢を見るなんて、なんだか欲求不満なのかと一瞬考えてしまった。
だけれど、基本的に私は全てに対して無欲気味なので、薬のせいでそんな夢を見たんだと思う事にした。
私の飲んでる薬には、睡眠薬だけじゃなく、意欲を高めるような安定剤も含まれているからだった。