叶う。 Chapter1




立ち話をしていたおかげで、私は慌てて家を飛び出しピアノ教室まで走って行く羽目になった。

元々体力はないので、ピアノ教室に着く頃には私はすっかり息が上がって呼吸が苦しかった。

基本的に引きこもりな私は、普通の人よりも体力がない。
身体も小さいせいもあるかもしれないけれど、何より運動が苦手。

運動することは嫌いではないけれど、まず球技はやる事が出来なかった。

理由は簡単で、指を怪我したらピアノが弾けなくなるからだ。
体育の授業程度ならまだしも、何よりピアノを優先してきた私は運動とは全くの無縁だった。


呼吸も落ち着いたので、私はいつものようにピアノの先生の家のベルを鳴らした。

すると直ぐにドアが開いた。
中から出てきたのはいつもの奥さん先生だった。

「あら、アンナいらしゃい。まぁ、今日はいつもと感じが違うわね?とっても可愛い!」

私の姿を見た先生は、にこやかにそう言って玄関を大きく開けた。

私は何て言ったら良いか分からなかったので、曖昧に笑っておいた。
だけれど、先生はそれ以上は何も言ってこなかったので少し安心する。

毎回友達と遊びに行くというのは正直面倒だった。


「どうぞ、入って。」


先生に連れられて、いつもの教室に入る。








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