叶う。 Chapter1
「こら!!和也なんてことしてんの!?」
凛が大声で怒っている声が聞こえてきた。
その声で私は現実に戻り、目を開いて自分の置かれている状況を把握した。
お腹に巻かれた2本の腕が、前のめりになった私をしっかりと支えていた。
その状況は、傍から見たらどう見ても後ろから抱きつかれてるように見えるだろう。
途端に顔が赤くなる。
「ちょっと、変態!!かなうに触るな!」
「ちげぇし、支えただけだ。」
「これだから猿どもは!かなう大丈夫?」
「だから、支えただけだって言ってんだろ?」
駆け寄る凛は、私から和也を強引に引っぺがした。
私は背中に感じていた体温が、急激に熱を失うのを感じた。
「大丈夫かなう?」
「うん・・・。」
「何か変な事されなかった?」
「うん、大丈夫・・・」
「後で殴っとくから!」
「ううん、違うの、あのね。」
暴走気味の凛になんとか状況を説明しないと。
「私が転びそうになったの。」
「うん?」
「それを、支えてくれただけだよ。」
「そうなの?」
「うん。」