叶う。 Chapter1
そんな私の願いは届かないのか、私を天使ちゃんと呼ぶ晃はまたこう質問してきた。
「へぇ、どこの国の人?」
「・・・・え?」
「ママさん、どこの国の人?」
そう言って、その可愛らしい顔を傾ける。
こんな会話は普通にしてたら聞かれて当たり前な会話なのだろうし、隠す必要すらないのに、私は何故か言葉に詰まった。
ママはヨーロッパ系だと知っているけれど、私はどこの国の血が流れているのかすら分からない。
親子でも、髪も目も違う、何より似ていない。
私が口を噤んだので、なんだか一瞬だけれど空気が悪くなった気がした。
正直、走って逃げ出したい衝動に駆られたけれど、そんな私を察知してくれたのか、和也がこう言った。
「まぁ、そんなことはどうでも良いんだよ。」
和也の言葉で、皆の視線は和也に向いた。
「ここは日本だし、日本に住んでりゃ日本人だろ?」
「まぁ、そうだよね。」
凛が相槌を打つ。
私はとりあえず、何も言わずに成り行きを見守った。
「こいつさ、こう見えてクウォーターなんだぜ。」
愁が晃に親指を向ける。
私は、だから晃が綺麗な顔をしているんだと納得した。