叶う。 Chapter1
「じゃあ、寒いし今日は解散すっかー。」
凛がそう言ったので、私もゆっくりと立ち上がった。
皆もバラバラと立ち上がる。
そして気付く。
地面に置かれたパーカーを借りっぱなしだったことに。
それを手に取って、汚れてしまった箇所をパタパタと叩く。
洗って返そうと思い、それを畳もうと広げていると横から差し出された手にそれを奪われた。
「あ・・・洗って返すから。」
「気にしなくて良いよ。どうせ汚れてるし。」
「でも・・・座らせてもらったし。」
「良いよ。」
和也はそう言って、そのままパーカーを着てしまった。
「あ・・・ありがと・・う。」
何だか申し訳なかったけれど、私はそれ以上しつこくするのも気が引けたので、小さくお礼を言った。
一瞬目が合うと、またその綺麗な漆黒の瞳に吸い込まれそうな不思議な感覚がした。
慌てて視線を逸らしたけれど、何だか気まずい。
どうしてだろう、何故か和也と視線を合わせると奇妙な気分になる。