叶う。 Chapter1





「じゃあ、また明日学校でね!」

凛がそう言って手を振ったので、私も笑顔で手を振り返す。


今日はありがとう、と言いたかったけれど、何だか胸がいっぱいで言葉に出来なかった。
後でメールをしようと、密かに思った。


もうすっかり暗くなった公園を、和也と私とは反対方向に向かって歩く4人に、私は何度か振り返って手を振った。

だけれどそれは、次第に暗闇に紛れて見えなくなった。


さっきまではすごく賑やかだったのに、和也と二人で歩く帰り道はすごく静かだった。

何だか急に夜風が冷たく感じて、私は両手を合わせて口の前に持っていって息を吐き出す。

ほんのり温かい息が、指先で白く霞んですぐに消えていく。


「寒いの?」


隣に居る和也に突然そう言われて、私は視線を向けた。

ヒールを履いているのに、頭一つ分くらい離れたその距離で少なくとも和也が175センチ以上身長があるだろうことが分かる。

凛もそうだけれど、身長がこれほど大きいと、とても同じ歳には見えない。


「・・・少し冷えてきたね。」


私はそう言って視線を前に戻し、手を擦り合わせた。

そんなことしたって、大して温めることは出来ないのだけれど、何故か皆無意識にそうする事が多い気がする。




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