叶う。 Chapter1
だけれど、和也は深く詮索したりしなかった。
「そうなのか、転校してきたんだっけ?入学した時居なかったよな?」
「・・・うん。そう夏休みの終わりに。」
「遠くから来たの?」
「・・・ううん。そうでもないよ。」
これ以上深く聞かれるのは、正直困ると思った瞬間・・・
ブーブーと、私の携帯が鞄の中で振動し始めた。
それは中々鳴り止むことがなくて、私は電話だと思った。
和也のパーカーに入れられた手を取り出すと、途端に掌が冷たい空気にさらされる。
「ちょっとごめんね。」
携帯を取り出して確認すると、それはママからの着信だった。
「ごめん、ママだ。」
私はそう言って携帯の通話をスライドさせる。
「もしもし・・・。うん・・・大丈夫。うん、ごめんなさい。」
私が電話で話していると、突然和也が私に向かってジェスチャーする。
「え?・・・ううん、なんでもない。ん?」
ママと通話しながら、和也の行動を見ていたので私は混乱気味になってしまった。
ママはそんな私を不信に思ったのか、電話口で何度も何処にいるの、何をしているの、と問いかけていた。
「電話代わって。」
私が理解出来ずにおろおろとしていると、突然和也はそう言って私から電話を取り上げた。