叶う。 Chapter1
「あ、もしもし、突然すみません。かなうさんの同級生で一条(いちじょう)と申します。」
私は目を丸くして、ママと電話している和也を眺めた。
「はい、娘さんをこんなに遅くまで連れ出してすみません。今、自宅に一緒に向かっていますので・・・・・・はい・・・はい、大丈夫です、きちんと送ります・・・・・はい・・・・・いえ、こちらこそすみません。今度はきちんと連絡を入れるように致します・・・・・・・はい、では多分20分くらいで着きますので、どうもすみませんでした、失礼します。」
和也はそう言うと、電話を切って私に渡して来た。
「優しいママさんだな。」
私はその行動に呆気にとられて、渡された携帯を取り落としそうになった。
見た目は一見チャラそうなのに、こんな風に大人な対応を取る和也に心底驚いた。
多分、あのまま帰ってもママは怒りはしなかっただろうけれど、色々注意されたはずだ。
あの事件があって以来、ママは私が夜出歩く事を普段は許してくれない。
だから心配して連絡をしてきたんだろうけれど、多分あのまま電話を続けていても、私は和也と一緒に家に向かってる事を伝えなかっただろうし、余計な心配をかけてしまっただろう。
下手をすると、レオン辺りがママに言われて私を迎えに来ただろう事が、簡単に想像出来た。