叶う。　Chapter1




「やり方分からなくて･･･。」


私はそう言って、恥ずかしくて曖昧に笑った。

「教えてくれる？」


そう言って和也に向き直り、携帯を両手で握り締めた。


和也は私の携帯を覗き込むと、自分の携帯も取り出して、丁寧にそのやり方を教えてくれた。
私達は偶然にも同じ機種の色違いの携帯だったので、その指導はスムーズだった。

携帯の明かりに照らされて、少し長めの和也の前髪の隙間から見える端正な顔がなんだかとても幻想的だった。
そしてその近い距離に、なんだか胸がざわついたけれど、私はそれに気付かない振りをした。


「これでオッケー。」

「ありがとう。」


私は新規で登録された、和也の番号とアドレスを見て何だか嬉しくなった。


「いつでも連絡してね。」


和也はそう言ってくれたけれど、私はまた曖昧に微笑んだ。
私から連絡する事はきっとないだろうけれど、そう言ってくれたことが、ただ嬉しかった。



そうしてまた私達は、ゆっくりと自宅に向かって歩き始めた。




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