叶う。 Chapter1
しばらく歩くと、私達はいつもの人で混み合う繁華街の近くまでやってきていた。
道中は、和也にダンスの事を色々と教えて貰ったり、私がピアノをやっていることなんかを話したりした。
他人と会話することに慣れてない私は、何度も訂正したりつっかえたりしたけれど、和也は凛と同じで私がきちんと説明したり話せるまで待ってくれる。
だから何故か話しやすかったし、とても居心地が良かった。
そして話に夢中になりすぎて、人にぶつかりそうになる度、和也はさりげなく私を自分の方へ引き寄せたり、庇うように歩いてくれた。
何か一つの物事に集中すると、私は極端に周りが見えなくなる。
普段は一人だし、注意しているけれど、こうして誰かと楽しく会話しながら歩くのが私にとっては難しかった。
「あ、この辺で大丈夫だよ。」
ピアノ教室が見えてきたので、私は和也にそう言った。
確かダンススクールもこの辺のはずだから、ここでバイバイすれば丁度いいと思った。
「うん?家どこ?」
「もう少し行ったとこだよ。」
「家まで行くよ。」
「え?ここで大丈夫だよ?」
「いや、家まで行くよ。」
「え?でもダンススクールこの辺でしょ?」
私はそう言って、キョロキョロと辺りを見渡す。
確か、この道を左に行った先にダンススクールがあった気がした。