叶う。 Chapter1
「全然良いのよ、わざわざ送ってくださってありがとう。」
ママの声音は凄く優しくて、本当にご機嫌な様子だった。
「女の子だから、一応心配でね。でも、こんな素敵な人に送ってもらえるならママ安心だわ。」
ママはそう言って、意味深に私にウィンクした。
私は背筋がザワザワした。
きっと後で質問攻めに合うに違いない。
「次からは、遅くなりそうな時は連絡しますので。帰りも必ず送ります。ご心配おかけしました。」
和也は笑顔でママにそう言った。
その堂々とした言葉遣いや態度は、本当に同じ歳には見えなくて、私は心底驚いた。
「良いのよ、気にしないで。良かったらお茶でもどう?」
「あー、すみません。今日はこれからダンスのレッスンがあるので、もう行かないといけないんです。」
「そうなの?残念ね。じゃあ、今度は是非遊びにいらしてね。」
「はい、是非。」
「じゃあ、あんまり引き止めちゃ悪いわね。本当にどうもありがとう。」
「いえ、こちらこそ、せっかくお誘い頂いたのにすみません。」
和也は最後まで丁寧にママに頭を下げると、未だ二人についていけてない私に向き直った。
「じゃあ、かなう。またね!」
「・・・うん・・・ありがと・・・。」
本当はもっときちんとお礼が言いたかったけれど、私はそこまで頭が回らなかった。