叶う。 Chapter1
私が無事に食事を終えて後片付けを始めると、ママはぼそっとこんな事を言った。
「アンナは大人しいから、ああいうしっかりした子が彼氏になってくれたらママ安心なんだけどな。」
ママはそう言うと、静かにリビングを出て行った。
私はママの言葉を聞かなかったことにした。
そんな事を言われると、何だか変に意識してしまう。
だけれど、それでどうこう考えるほど私の頭は賢くなかった。
和也は偶々、帰り道だから送ってくれただけ。
凛の幼馴染だから紹介されただけであって、正直言って他人だった。
そう、冷静に考えればただそれだけのことだ。
それで彼氏彼女になったり、とかそんなことを想像するのは愚かだと思うし、何より私には無縁の話だ。
私は後片付けを終えると、今は真面目に勉強しているレオンとシオンを横目にリビングを出た。
そして部屋に荷物を置くと、そのまま防音室に向かう。
ピアノは一日でも弾かないと、指が物凄く鈍る。
今日は色々あって疲れたけれど、それで手を抜けば間違いなくグランプリは取れない。