叶う。 Chapter1




「あら、大変。もうこんな時間じゃない。」


何曲か演奏を終えたところで、ママが驚いたように壁に掛けられた時計を見た。

私もつられて視線を向けると、もう時刻は23時。

いつもは家に居るので、夕方からママにピアノを聞いてもらったりしているので、時間が随分遅いことに私も驚いた。


「そろそろ寝ないと。アンナも早く寝なさい。」

「うん、お風呂入って寝るね。」


私はそう言って、ママと一緒に防音室を出た。

ママは日曜日は少し早めに寝ることが多い。
普段が遅いから週末くらい早く寝たい、とだいぶ昔にそう言っていた。


ママは部屋に向かう廊下で私の頬にいつものようにキスをすると「おやすみ」と言って、自室に向かって行った。

私はそのままバスルームに向かった。


バスルームの前で聞き耳を立てる。

静かなバスルームからは物音一つしなかったので、私はその扉を開けて中に入った。






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