叶う。 Chapter1
視線だけをドアに向けると、その人はドアを静かに閉めて後ろ手に鍵を閉めた。
突然の訪問に言葉すら出せない。
どうして来たの?
電話からは和也が何かを喋っているけれど、私の耳には届かなかった。
その人はドアを背に、腕を組んで私を見下ろしてる。
綺麗な絹糸のような髪の隙間から、冷めた深い蒼い瞳がじっと私の瞳を捉えて離さない。
「・・・・ごめん、また明日。」
私はそれだけ言うと、慌てて電話を切った。
だけれど、慌てて切ったのが悪かったのかまた直ぐに携帯が振動した。
「・・・出ないのか?」
シオンは冷めた声でそう言うと、片方の口角だけを上げて笑う。
「・・・どうして?」
私は自然と小声になった。
ママもレオンも家に居るこの状況で、シオンが私の部屋にやってきた理由が分からない。
「何が?」
「・・・・どうして・・来た・・・・の?」
身動ぎ出来ずにシオンを凝視する。
シオンは私の手に握られた、未だ振動する携帯を見て舌打ちすると、それを取り上げた。
そしてそれを確認すると、そのまま電源を切った。
「・・・来たら悪いのか?」
そう言ってもうすっかり静かになった私の携帯を、ベッドに放った。