叶う。 Chapter1
それから数分後、ママは支度をすると言って部屋を出て行ってしまった。
ベッドで横になる私の隣には、なぜか椅子と小さいサイドテーブルが運ばれて来ていた。
シオンと2人きりのこの空間は何だか息が詰まる。
リビングで2人きりだったら、私はきっと何も思わないし、感じないのだろうけれど、毎度繰り返されるおかしな関係のせいで、自分の部屋なのになぜかとても居心地が悪い。
ちらりと視線をシオンに向けると、シオンは椅子に座って制服のネクタイをするりと抜き取っていた。
鬱陶しそうに、襟元のボタンを二つほど外して足を組むと、片肘を膝に乗せて私の方を向く。
私は鼻まで毛布を引っ張り上げた。
無言で数秒間みつめあったけれど、居た堪れなくなった私はそのまま毛布を被った。
すると微かに人が動く気配がして、部屋のドアが開く音が聞こえてきた。
私はそーっと毛布を下げると、部屋の様子を確認した。
どうやら、シオンは部屋から出て行ったようだ。
なぜだか、すごくほっとした。