叶う。 Chapter1




そう。

あの日、あの場所に居たのはシオンだった。


私はそれまで、誰にも自分のされてきた事を話すことをしなかった。

大人達は、私の身体や状態を見て何かを察していたかもしれないけれど、それでも私は話さなかった。


毎日、色々な検査をされたり、絵を描かされたり、沢山やらされたけれど、それでも私は自分の事を誰にも話すことはなかった。

何を聞かれても答えない、表情も変えない私を、大人達は次第に持て余してた。

いつしか私は、人形みたいだと噂されるようになっていた。


看護師さん達は私を不気味がったし、毎日のようにやってくる違う医師達は何とか私に反応させようと色々試していたけれど、それでも私は変わらなかった。


そう、あの日、あの時、あの場所で、シオンに出会うまで。

誰にも伝える事のなかった私の秘密を、シオンはいとも簡単に私から引き出した。




それから私は、いつしかこの家に引き取られた。

何故か理由は分からない。


家に引き取られてから、私は色々な治療を受けたし、沢山の薬を飲んで過ごしてきた。

だからだろうか、私はこの日の出来事をいつしか忘れていた。

だけれどなぜ、このタイミングでそれを思い出したのだろう。

あれだけ鮮明に、夢に見たのだろうか?





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