叶う。 Chapter1
俯いてリンゴをむいてくれるシオンの横顔が視界に映る。
少し長めの睫毛に隠れた深い蒼い瞳、真っ直ぐな鼻筋、綺麗な顎のラインに至るまで、その顔は完璧に整っている。
まるで海外の映画からそのまま抜け出してきたかのようなその横顔に、思わず見惚れてしまいそうになる。
小さい頃から、シオンは何でも完璧だった。
勉強も、運動も、音楽も、そしてその容姿も。
それは私とは正反対で、何だかとても悲しい気持ちになった。
「ほら。」
シオンはそう言って、横に居る私に皮をむいたリンゴを渡してきた。
「・・・ありがと。」
私はそれを受け取ると、ゆっくりと口に含んだ。
途端口の中に、果物の酸味と甘味が広がる。
それは少し痛む喉に心地よかった。
シオンはそんな私を横目で見ると、後片付けをしにまた部屋を出て行った。
病気の時は、なぜかとても果物が美味しく感じる。
私は少しずつ、リンゴを噛み砕いて飲み込んだ。
いつの間にか、もう吐き気は治まっていた。