叶う。 Chapter1
しばらくすると、またシオンは部屋に戻って来た。
私は半分くらいのリンゴを食べ終えたけれど、全部は食べ切れなかった。
シオンは相変わらず無表情で私のベッドに座ると、さっき開けた薬を水と一緒に渡してきた。
「熱が下がらなきゃ病院行くぞ。」
シオンにそう釘を刺されたので、大人しく薬を受け取ってそれを口に含む。
薬は好きじゃないけれど、水できっちりと喉に流し込む。
シオンはそれを横目で確認すると、私の肩まで毛布を引っ張り上げた。
「もう少し寝ろ。」
そう言って私のおでこに手を当てる。
そしてそのまま優しく頭を撫でてくれた。
その大きな掌はとても心地よくて、私はゆっくり目を閉じた。
途端、その手が離れる。
ベッドが小さく軋んだので、シオンが立ち上がったのだと分かった。
どうしてだろう。
何だか1人になるのがとても寂しかった。
「い・・・・かな・・・いで。」
シオンの後姿に、そう呼びかける。
ゆっくりと振り返ったシオンは、何ともいえない表情を浮かべてた。
いつもの冷たい蒼い瞳は相変わらずだったけれど、なぜかとても悲しそうな表情に見えるのは、きっと熱があるからだと思った。