叶う。 Chapter1





私はゆっくりベッドを起き出すと、部屋の照明をつけた。

そしてサイドテーブルに置かれた水を飲んでから、熱を計る。

熱は36,8度に下がっていた。

多分、薬が効いたんだろう。

私はベッドから出て上着を着ると、そのままリビングに向かった。




随分と長い時間寝てしまったので、意識がぼんやりとする。


リビングに着くと耳を澄ませた。
中からは何か動き回る音が聞こえたので、私は静かにそのドアを開けた。




「あら、アンナお嬢ちゃん目が覚めましたか?」

扉を開けると、キッチンから元気の良い声が聴こえてきた。
声につられて視線を向けると、いつもお手伝いに来てくれている五十嵐さんの姿がそこにあった。


「こんばんは。」


私はとりあえず、挨拶だけ済ますと周りを見渡した。
だけれど、ママもシオンもレオンも居ない。

私の視線に気付いたのか、五十嵐さんが人懐っこい笑顔で声を掛けてきた。


「お母様からさっき連絡を頂いたんですよ。アンナちゃんの具合が良くないから来て欲しいって。もう熱は大丈夫ですか?」

五十嵐さんはそう言うと、私の傍までやってきておでこに手を当てる。




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