叶う。 Chapter1





「あら、もう熱下がったみたいですね。何か召し上がります?」


五十嵐さんはそう言って、またキッチンに向かった。

いつも、月曜日は私のピアノがないので五十嵐さんはお休みなのだけれど、どうやら今日はママに呼び出されたらしい。

私は何だか申し訳なく思った。
だけれど今はそれよりも聞きたいことがあったので、テーブルについて、何か軽い物を食べたいと五十嵐さんにお願いした。


「うどんか何かで大丈夫ですか?お粥でも?」

「お任せします。」

「じゃあ、鍋焼きうどんにしましょうね。温まりますから。」

「ありがとうございます。」


正直ご飯は食べたくないけれど、折角来てくれている五十嵐さんの好意を無碍に出来ないし、何より最近はきちんとまともに食事を取ってなかったので、身に沁みて反省した。

キッチンでご飯を作る五十嵐さんの後ろ姿に、さりげなく話しかける。

「あの・・・ママは?」

「お母様は先程一度帰宅されましたが、アンナさんの様子が良さそうなのでお仕事に行かれましたよ。」

「そうなんですか?」

「はい、お部屋に一度伺ったと思いますが気付きませんでした?」

「はい、全然。」

「相当ぐっすりお休みだったんですね。」

五十嵐さんは優しくそう言ったけれど、手は休めずに料理を作っている。



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