叶う。 Chapter1




冷静に考えれば、怒っているに決まってる。

勝手に電話を切って、挙句電源が切れて、下手したら家に来た時には素っ気無い対応をされて、それが全て昨日会ったばかりの人間にされたことだったら、普通なら怒って当然だ。

私はそわそわと落ち着かない気持ちで、携帯を握り締めていた。

そして、暫くすると手に握られた携帯が小さく振動し始めた。

私は画面を確認して、落ち着かない気持ちのまま通話をスライドさせた。


「もしもし・・・。」

“かなう?さっきはごめん”

今度はさっきと違って、周りの音が静かだった。

「ううん、大丈夫。こっちこそごめん。」

昨日は、と付け加えるのを忘れてしまった。


“いやいや、こっちこそごめん。具合悪かったのに気付かなくて、遅くまでつきあわせちゃったし。もう大丈夫なのか?”

「うん、さっき熱下がったから・・・。」

“そっか、なら良かった”

和也はそう言って、電話口で微かに優しく笑った。
文句の一つも言ってくれれば言い訳出来るのに、和也はさっきから怒っている様子でもなくて、何だかすごく気まずい。

だけれど、自分から地雷を踏みに行く勇気はなかったので、私はさりげなく違う話題を振ってみることにした。





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